スギ舌下免疫療法とは?
シダキュアは、スギ花粉症のアレルゲン免疫療法のお薬で、スギ花粉を原料とするエキスから作られています。
少量から服用することによって体を慣らし、スギ花粉によるアレルギー症状(スギ花粉症症状)を和らげます。
服用開始前に、スギ花粉症の確定診断が必要ですので、血液検査にてスギの抗体を持っているかどうかを検査します。検査でスギの抗体があり、スギ花粉症の症状が出ていた方が治療の対象となります。
どんな人が治療できる?
特に、下記のようなかたにお勧めしています。
- ・スギ花粉症で困っていて、薬がたくさんいるので少しでも症状を良くするか、薬を減らしたい。
- ・眠気など、薬の副作用がある。
- ・まだ若いので、これからずっと毎年花粉症に悩むのか考えると心配。
- ・数年以内に妊娠の希望や予定はないが、将来に妊娠した際に薬が使えないのが不安。
- ・高校・大学などの受験期がスギ花粉症と重なるので、少しでも良くしておきたい。
・ただ、検査などで治療の適応と判断されたかたでも以下の方は適応外です。
- ・妊娠されている方、および、近いうちに妊娠希望の方
- ・重症の喘息を合併している方
- ・重い心臓の病気を合併している方
- ・癌の治療をしている方
- ・免疫不全などの病気の方
- ・治療で免疫抑制剤を使用している方
※高血圧でベータブロッカーという薬を服用している方は、他の薬に変更する必要があります。
子供の治療は、適応上では何歳からでも可能ですが、治療を上手くできるかを考えると5歳くらいから可能と考えています。また、治療には血液検査が必要ですので、当院では5歳以上で採血をさせてくれるお子様が適応となります。
高齢者の方は、適応外ではありませんが、効果のある方の割合がやや少なくなると予想されます。また、毎日の舌下投与を3年以上行ないますので、スギ花粉症の時期に数ヶ月間の治療を繰り返すのがよいか、あるいは、毎日舌下免疫療法をするのがよいかをよく考えてください。
アレルギー症状の有無にかかわらず、毎日、最低3~5年間にわたり継続して服用する必要があります。
どんな方法で、どのくらい時間がかかる?
最初の1週間は2,000JAU錠(黄緑色のラベル)を、2週目以降は5,000JAU錠(青色のラベル)を1日1回1錠、3~5年間にわたり継続して服用します。舌の下にお薬を置き、1分間保持した後、飲み込んでもらいます。
初回の服用は、アレルギー反応が強く出ることがありますのでスギ花粉が飛散していない時期(6~12月)に、医師の監督のもと院内で行う必要があります。
そのため、初回の服用は緊急時に対応できるように平日の午前診で行います。
医師の前で内服し、院内で30分経過を見てから帰宅していただきます。問題なければ翌日から6日間2,000JAU錠(黄緑色のラベル)を服用していただき、初回の服用から1週間後に再度来院していただきます。大きな副作用がなければ5,000JAU錠(青色のラベル)を1週間分処方します。翌週も問題なければ以後は1ヶ月分処方を行い、月に1回の来院で治療を継続します。
初回治療は、18歳以下の方は必ず保護者の方と来院してください。また、2回目以降でも15歳以下の方は保護者の方と来院してください。
スギ花粉症とダニアレルギー、両方で困っている方は、困っている方から治療を開始しましょう。治療を開始して1~2ヶ月すればもう一方の治療を開始することはできます。
いつから治療できる?
花粉の飛散中に治療を開始すると、アレルギー反応が強く出る可能性があること、治療を開始してから効果が現れるまで3ヶ月程度はかかるため、早くは6月から、遅くとも12月末までには治療を開始する必要があります。
治療で気をつけることは?
- ・服用前後2時間程度、激しい運動、アルコール摂取、入浴などは避けてください。
- ・服用を中止する場合、自己判断で中止せず、必ず医師に相談してください。
- ・服用を長期に中断した後再開する場合、必ず医師に相談してください。
- ・服用を正しくできなかったとき
- 1)誤って多く服用してしまったとき
- 直ちにに吐き出し、うがいをしてください。翌日、改めて前日の用量を服用してください。
- 2)服用し忘れたとき
- その日のうちに気がついた場合、その日の用量を服用してください。
翌日に気がついた場合、前日の用量を服用してください。
服用したか不確かな場合、その日は服用しないでください。
いずれの場合も、決してその日の分より多くを服用しないでください。
異常が認められた場合、直ちに医療機関を受診してください。
また、スギ花粉が飛散する時期は、シダキュア服用後に体調の変化がおこるおそれがありますので注意してください。
スギ花粉症の症状がひどい場合、医師の指示に従い、アレルギー治療薬などを使用してもかまいません。
症状やお薬の使用状況を日誌などにまとめ、受診時に医師に確認してもらいましょう。
治療の副作用は?
シダキュアの服用後、次のような副作用が現れるおそれがあります。
服用後少なくとも30分間、服用開始初期、スギ花粉が飛散している時期は、特に注意してください。
- 主な副作用
- ・口の中の浮腫【ふしゅ】、かゆみ、不快感
- ・喉【のど】の刺激感、不快感
- ・耳のかゆみ など
- 重大な副作用
- ・ショック
- ・アナフィラキシー(※)
※治療開始時にお渡しします患者カード「舌下免疫療法薬を服用される患者さんへ」に主な症状が記載してありますので、必ず目を通してください。場合により救急車の要請が必要なことがあります。
具体的には以下のようなものがあります。
- ・皮膚の症状:じんましん、そう痒感、紅斑、皮膚の発赤などが全身に現れる
- ・消化器の症状:胃痛、吐き気、嘔吐、下痢など
- ・眼の症状:視野異常、視野の狭窄など
- ・呼吸器の症状:鼻がつまる、くしゃみ、声がかれる、喉のそう痒感、胸のしめつけ感、呼吸困難、咳、呼吸の音がゼーゼー、ヒューヒューする、チアノーゼなど
- ・循環器の症状:頻脈、不整脈、血圧低下など
- ・神経の症状:不安、恐怖感、意識の混濁など
治療にはいくらお金がかかるの?
舌下免疫の治療のみで薬の処方がない場合には、医院での治療費と薬局での薬代と合わせて維持期には1ヵ月あたり2,000~2,500円程度の負担(保険適応3割負担の場合で、薬代のみでは1,300円程度です)になります。
スギ花粉の飛散時期だけでなく1年を通じて治療をしますので毎月ほぼ同額の治療費となります。また、治療開始前には検査が必要となり、その際にも5,000円程度の検査費負担がかかります。
舌下免疫療法を行っていてもスギ花粉が飛散する時期に症状が出る可能性がありますので、その場合にも症状を抑える薬代などが必要になります。しかし、舌下免疫療法を行うことにより、スギ花粉飛散期の症状が軽くなれば、これまでよりも症状を抑える薬の量が減る可能性もあります。